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看護教員が語る、「子どもの看護」                ~臨床経験から感じた小児看護の魅力~

更新日:2022年10月5日


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「小児看護学に興味があるけど、子どもたちとどんな関わり方をするのだろう?」という人や「実際に働いていた人のお話を聞いてみたい!」という方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、身近にいるけど意外と知らない、小児看護学を専門とする大学教員にインタビューをさせていただき、実際の様子や小児看護の魅力についてお聞きしました。



                                  文章:シロップ


小児看護に携わり始めたきっかけ


Q :小児看護に関わり始めたのはいつからですか?

A :大学を卒業して大学病院に入職し、希望の小児科に配属になったところから小児看護に関わり続けています。

小児科を希望したのは、子どもが好きだったからです。

様々な領域の実習で患者さんと関わって、特に子どもとの関わりでは大人にはない視点で色んな発言があったりだとか、先の読めない反応があったりすることが面白いと思いました。大人はどうしても看護師に対して気を遣ってしまいますが、子どもは良くも悪くも素直に反応してくれます。私は、反応が素直に返ってくる方が気持ち良く仕事ができると考えていました。



Q:子どもと関わる仕事が多くある中で看護師を選んだ理由を教えてください。

A:お金と切り離れたところで、人と関わる仕事がしたいと思って、看護の道を選びました。「自分がこれだけ働いたからこれぐらいの給料がもらえる」というような、仕事の内容がお金という対価で評価されるのではないところで働きたいと思っていました。つまり、相手のためになること、喜んでもらえることを目指して働き、その成果で評価されたかったのです。また、父親が薬剤師で、医療が身近にある環境で生活をしていたこともあり、自然と看護師が将来の選択肢になっていました。



Q:実際に小児科で働く中で感じた楽しさや魅力を教えてください。

A:子どもと関わっていく中で、子どもって基本前向きで、たくましいと感じることが多いです。大人の患者さんは、自身の疾患に対して「私の病気は治るの?」「私はいつ死んでしまうの?」と、病気に対してネガティブな反応をすることが多いですが、子どもは「今を精いっぱい生きている」というところがすごく伝わります。

また、小児科では付き添いの親御さんとの関わりも長いので、子どもや親御さんとの関係はとても深いです。そのため、相談に乗ったり、入院環境をどのようにしていくかについて一緒に考えたりすることが多かったと思います

 私の働いていた時代では入院期間の長い患者さんも多く、付き添いの親御さんとの関わりも深かったです。入院生活や疾患に関する相談に乗ったり、入院環境を共に整えていくといった関わりだけでなく、1年を通して色んな行事を行っていました。3月にはひな祭り、5月は子どもの日、夏は花火大会、秋は運動会、冬はクリスマス会、お正月、 餅つきや豆まきなど、医師も巻き込んで行事を楽しんでいました。そのような行事の中で、子どもたちや親御さんがとても楽しんでいる姿や今までにない表情が見られ、このように患者やその家族と接することも看護なんだと実感しました。臨床では残念ながら亡くなるお子さんもいたけれど、親子そろって楽しむ姿や笑顔が見られたことで、親子の思い出作りにも貢献できたと感じています。

 また、私の働いていた小児科病棟では、他大学の小児科医や「小児糖尿病の親の会」と連携して「小児糖尿病サマーキャンプ」というものが行われていました。これはⅠ型糖尿病の子ども達を対象とし、1週間ほど運動したり、キャンプ生活を楽しむものです。それだけでなく、糖尿病の自己管理方法を学んだり、同じ疾患を持つ友人を得たりといったことができます。この取り組みには、私が病院に就職して2年目くらいの時に誘われ、看護スタッフとして参加しました。

サマーキャンプに参加した子ども達は、キャンプの中で入院生活とは全然違う表情を見せてくれます。学校生活での困っていることや悩みなどを子ども達なりに共有したり、糖尿病の子どもの中でも先輩の子が後輩をサポートしたりする姿も見ることができました。このように看護という仕事を通して、子ども達との関わりの中で色んな発見ができることが、看護って面白いと思うし、私にとっての小児看護の魅力と思います。

また、教員になってからも、それぞれの地域で開催されている小児糖尿病キャンプに学生を巻き込んで参加し続けています。

これまでたくさんの子どもたちと関わりをもってきましたが、私は子どもと関わるのが純粋に好きなのです。 


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臨床での経験から、教育者の道へ


Q:臨床経験を踏まえて、大学の教員になろうと思った理由を教えてください。

A:私が病院で働いていた頃は専門学校が多く、看護学生の臨床実習指導は学校の教員でなく、病棟の看護師が行っていました。そのため当時は私も実習指導を担当する看護師として、学生と関わることがありました。実習を通して、学生は大きく成長したり変化したりします。指導者である自分の関わり方によって、成長する場合もあれば、そうでない場合もあります。もちろん学生本人の力も大きいですが、指導者として関わる中で育てるという感覚がありました。学生が成長していく過程に関わる中で、そもそも臨床現場に来るまでに、「学生って学校でどんな育ち方をしてきたのかな」などと考えるようになりました。もともと、私は看護学部ではなく看護師免許の取れる教育学部に在籍していたこともあり、学生の成長していく過程が面白く、興味を感じるようになったのかもしれません。このようなことから、看護師として働く中でも、看護を1からから教える教育の場で学生を育てるという働き方も面白いだろうと考えました。そして、そう思っていた矢先、「教員やってみない?」と声をかけられたことをきっかけに、教員の道に進みました。



Q.大学の教員は研究を行っているイメージが強いのですが、研究に関してはどのように行ってきましたか?

A:まず最初に短期大学で教員になりました。当時は「短期大学の教員は研究者である」という自覚は全くありませんでした。短期大学での役割は、3年の課程で看護師の職業人を育てていくこと。そのため、短期大学の教員になった当時は、看護学を教えることや臨床指導することの方が 楽しいし、それが私にとっての教員生活の中心となっていました。

 その後、大学に移動した際、初めて研究を本格的に行う環境がありました。

大学では、母性看護学や小児看護学分野の他の先生方に「一緒に母子に関連した研究をやっていきましょう!」と誘われたことから、研究活動が始まりました。そこから研究についていろんな経験を重ねることができました。



Q:教員としてのやりがいや面白さ、大変なところを教えてください。

 A:やはり学生が成長していくところが一番面白いです。教員である自分たちが伝えたいと思うところを、学生が学生なりにちゃんと吸収して実習の場などで生かし、さらに工夫して主体的に看護実践をする。そんな経験を通して、将来看護師になる者としての自信が積み重なっていく過程を見ることができるのは面白いと思います。

一方で、看護に限らず 医療は日々進化していくので、常に自分でアンテナを張って、古いものばかりを教えることにならないよう、注意していかなくてはならないという大変さや責任の重さを感じます。

 現在勤務する大学では、助手や助教の先生と小児看護学の講義内容や演習方法、実習の進め方、研究等について、一緒にディスカッションを行うのが楽しいです。

また、現在から今に至る様々な実習先の病院施設で、様々な疾患の子どもや重症心身障害のある子どもやその親御さんと出会いました。サマーキャンプなどの活動や研究を通して関わりのあった子どもや家族も大勢います。そういう経験の積み重ねが今、講義や実習指導の中での、自分の柱になっていると思います。



Q:小児看護の講義を通して学生に伝えたいことは何でしょうか?

 A子どもは、大人が思ってる以上にいろんなことを考えていて、「何も分からない」という訳ではないということを伝えたいです。子ども達は、子ども達なりにいろんなことを考えています。でもそれが上手く言語化されなかったり表現できなかったりする。ただ訳も分からず泣いているのではなくて、子どもなりの理由があってのことなのです。その思いや苦痛を、しっかりと汲み取って接してほしいと思います。学生には、子どもなりの考えがあるというのを踏まえた上で看護してほしいです。



「看護」の魅力、そして学生へ伝えたいこと


Q:先生の思う看護の魅力を教えてください。

 A:看護の現場では、看護者側が関わったら関わった分だけ必ず何か変化が起こるものです。その変化が起こることが面白いし、楽しいと思うのでそこが看護の魅力だと思います。

 看護した分だけ、そのまま反応として返ってくるので、次どうしていこうかと考えられるという面白さも、看護にはあります



Q:最後に、キャリアに悩む学生に向けてメッセージをいただけますか。

 A:もし、「やりたいことが看護ではないな」と思ってしまったのなら、早めに看護よりも興味のある道にトライする方が良いと思います。でも、キャリアに悩みつつも、諦めることなく今まで看護の道を進んで来たのであれば、「せっかく選択した道なのだから、もう少し頑張ってみよう」と声をかけたいです。

 患者さんとの関わりに自信がないなどの理由で看護師になることに自信がなくなることもあるかもしれません。しかし、看護師になる上で、人を大好きになる必要性はないと思います。看護師は、人との関わりは避けられない職業ですが、たとえ関わりが苦手でも、色んな距離の持ち方や関わり方を勉強して仕事の一つとして選ぶことは十分可能だと思います。人との関わり方にに自信がなくても、少しでも人に関心を持っ、今の道を選んだのであれば、看護師になることを前向きに考えてほしいと思います。


 キャリアに限らず、悩んだときは物事の捉え方を変えてみると良いかもしれません。

 ネガティブに捉えているのを、ちょっと視点を変えてポジティブに捉えてみると少し面白みが見えてきます。例えば、注意を受けたときも、「自分はだめなんだ」と思うのではなくて、「自分を良くしてくれようとしている」と思えば見方が変わります。そして、さらに自分にできることを発見したとき、自信に繋がって行くと思います。





インタビューを終えて

 今回、小児看護の分野で実際に働いた時の様子や魅力、看護の強みについても知ることができ、子どもに関わる仕事はとても幅が広く色んな活躍の場があることを学びました。また、キャリア選択を行う上での考え方の変化、軸となっていた事柄をお聞きし、自分自身の考えと照らし合わせて考えることができました。

 キャリアに悩んでいる学生の皆さん、実際に働く人のキャリア選択の仕方、働く姿を知ることで視野を広げ、様々なキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。



ープロフィールー

弘前大学教育学部(特別教科看護教員養成課程)を卒業後、大学病院の小児科病棟に看護師として勤務する。その後、短期大学の教員(小児看護学担当)となり、東北・北海道・北陸の看護系大学の教員を経て、現在は金沢医科大学看護学部で小児看護学の講義や実習を担当しながら、研究活動を行っている。












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