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行政保健師として働きながら大学院へ。充実したキャリアを歩むために


 保健師資格を活かした様々な働き方について詳しく知る機会が少なく、またライフイベントを含めた保健師のキャリアについて想像することが難しいと考えた私たちは、実際に保健師の方にインタビューをすることにしました。

 現在行政保健師として働きながら、大学院で公衆衛生学を学んでいるEllieさんにインタビューをさせていただき、前回は『行政保健師の魅力』について語っていただきました。今回は充実したキャリアを歩むために大切なことについてお話をしていただきました。


前編はこちら


文章:わかば



満足のいくファーストキャリアとは?


 近年、2,3年間病院での勤務経験がないと保健師として採用されない自治体も増えてきました。そこで話題にあがるのが、「新卒で保健師になる」のか「看護師経験を経てから保健師になる」のかという問題です。この問題についてEllieさんは以下のように語ってくださいました。


 「"保健師に絶対になりたい、保健師しかやりたくない人"や"看護師になりたくない人"は新卒で保健師でも良いのではないでしょうか。正解はないので、実際に看護師になってみて、もういいなと思ったら辞めて良いし、必ずしも3年間働かなくてもいいと思います。でも3年くらい働き慣れてくると面白さもわかってくるし、転職に有利になることもあるので、3年間働いた方が良いこともたくさんあると私は考えます。実際私の自治体では、新卒で保健師として働く人も半分程いますし、新卒は新卒としての強みがあったり、早く働いた分、保健師としての経験年数を積めたり、昇任も早いなどそれぞれにメリットはあります。看護師経験はフィジカルアセスメントや病気や治療などの知識面では役立つことはありますが、保健師としてのスキルはまた別なので、気にしすぎなくてもよいかと思います。」



 また、ファーストキャリアをどうするか、という問題は多くの看護学生の中で話題になります。Ellieさんは学生時代に急性期の看護に苦手意識を持っていましたが、もっときちんと学びたいという思いから、ファーストキャリアとして急性期病棟を選んだそうです。


 ファーストキャリアの考え方についてEllieさんは以下のように語ります。


 「ファーストキャリアをどこで積むかというのはそんなに重要ではないと私は思います。自分が将来やりたいことがあれば、そのために何が必要なのかを考えるのも一つだと思いますし、やりたいことがなければとりあえず興味のあることを始めてみるというのも一つだと思います。私は国際保健をやりたいという気持ちが初めにあったため、それに向けて自分に何が必要かということを考えながらやっていました。でも自分が経験していく中でやりたいことや考え方が変わることもあるので、色々な分野の人と話しながら視野を広げてその時々で柔軟に学び、自分が納得できる選択肢を選ぶことができればいいと思っています。」


 「ファーストキャリアをどうするか」ということに重点を置くというより、「自分はどのようなことをしたいのか」、「何に興味があるのか」ということをきちんと考えておくことが必要だと学びました。それらが明確に見えていると自ずと進むべき道が見えてくるのかもしれません。しかし、まだ明確でない人も多いと思います。そのような方は、学生のうちに様々なことを実際に経験し、少しでも自分の興味が湧くものを見つけることが大切なのではないでしょうか。



学ぶことは自分がやりたくてやっていること


 Ellieさんは、現在働きながら大学院に通っています。実習やバイト、部活など様々なことを両立しなければいけない看護学生の私たちにとって、その両立については特に気になる点ではないでしょうか。


 「両立を頑張っているつもりはないんです。私は学ぶことが好きなので、自分がやりたくてやっています。より広い公衆衛生の分野において、様々な人の話を聞いたり、最新の研究を学んだりすることによって自分がしていること以外の視点から新しいことを学べて楽しいです。仕事をしていると自分だけでは解決できない問題がたくさんありますが、並行し様々な学びをすることで、自分のしている仕事でこうすれば良かったんだと気付くこともできます。学校の課題に追われて大変な時もありますが、働きながら学んでいるからこそ実践と結びつけることができ、気付けることも多くあります。」とEllieさんは言います。


 『自分がやりたくてやっている』という言葉が印象的で、本当にやりたいことを見つけて実際に行動に移せるということは、私たちが目指したい姿だと感じました。本当にやりたいことを見つけるためには、様々な人や物、出来事に実際に触れることが大切だと考えますが、学生の私達はその時間こそ、大切にすべきなのかもしれません。


 また、キャリアを考えるにあたって、仕事だけでなく家庭などのプライベートもどれだけ充実させられるか、ということも気になる点です。プライベートについても少し伺ってみました。


 「行政保健師として働きながら大学院で学んでいると、自分の自由な時間はほぼないので、子育てをしながらでは難しいかもしれないと思いますが、大学院には子育てしながら通っている学生もいますし、私は夫の理解もあり、両立できています。忙しい生活が好きかどうか、できるかどうかは性格ややる気にもよりますが、プライベートも充実させることはできなくはないでしょう。限りなく自分の時間はなくなりますが、友達とのご飯や、数時間くらいのお話しはできますし、働く環境やその人の時間の使い方にもよると思います。」とEllieさんは言います。


 働く環境や周りの人との関わりが大きく影響しますが、キャリアを考える際に自分が大切にしたい点や妥協する点を見つけておくことは、より豊かな人生にするために大切なことの一つだと考えられます。



看護学生へのメッセージ《充実したキャリア人生を歩むコツ》


 「やりたいことをやるというのが充実したキャリア人生を送る上で大事です。自分がやっていて楽しいことに挑戦してみるというのは自分自身のメンタルヘルスにおいても重要なことです。興味のあることには色々挑戦してみて、自分で調べたり色々な人に話を聞いてみたり、看護にこだわらずに視野を広げて、将来やキャリアのことを考えていくのがいいのではないかと思います。やらずに後悔することはありますが、やって後悔することはないと思うので、恐れずに色々な経験をしてみてください。



最後に


 私は興味のあるキャリアの一つとして保健師を考えていましたが、職業ばかりに目が向き、自分のキャリアと結びつけて考えることはなかなかありませんでした。しかし、Ellieさんのお話を伺い、もっと視野を広げて、自分が納得できるキャリアの一つとして保健師という選択肢があると考えられるようになりました。

これからは、自分が本当にやりたいと思えるようなキャリアに向けて、様々な人や物に出会うことを大切にしていこうと思います。

インタビューにご協力いただいたEllieさんに心より感謝申し上げます。



Ellieさんのプロフィール

 大学卒業後、附属病院の急性期病棟にて看護師として勤務。その後オーストラリアにワーキングホリデーで滞在し、英語の語学学習、アシスタントナースとしてナーシングホーム等にて勤務を行う。帰国後、派遣看護師として中小病院や介護施設等での勤務を経て、2018年より政令市の保健師として就職。2021年より現所属と並行して公衆衛生学の修士課程へ進学。

Twitter:@ellie_tkbjpn

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